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2016.05.15
ZEH

ZEH(Net Zero Energy House ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

家づくりを勉強されている方も、多く目にしている言葉ではないだろうか。
断熱性能を上げて、省エネ設備機器を使用する。さらに創エネルギー設備によって、年間の一次エネルギー消費量の収支をプラスマイナスで「ゼロ」にする住宅である。

断熱性能については、地域区分によってそれぞれ基準が定められいて、北海道などの寒い地域の方がより高い性能を求められる。
「ゼロ」という言葉に惑わされる方も多いようだが、一次エネルギー消費量の対象は
「暖房・冷房・換気・給湯・照明」
の5つに限定されていて、家電などによる消費量は入っていない。

政府目標としては、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す、と設定されている。

多くのホームページや住宅展示場でも「ZEH」を大々的に掲げているのが目立つ。
そして、「ZEH仕様で125万円の補助金がもらえます」というのが謳い文句である。

ZEH支援事業としての補助金制度は経済産業省が主体となっているため、ハウスメーカーに主眼をおいた政策とも言える。
補助金事業は限定的措置であろうが、ハウスメーカーによる更なるZEHの普及、中小工務店のZEHに対するノウハウの確立が一番の狙いと思える。
平成26年度の補正予算では、補助金が交付された9割がハウスメーカーであった。
全国的に見て、中小工務店の底上げをはかろうという意図もあるのではないか。

今年度の補助金事業には、ZEHビルダー登録が必要となっていることからも、中小工務店に対しては、特にしっかりとした知識とノウハウを持っている事業者でなければ認められないということだろう。
省エネやZEHに無頓着である建築屋が淘汰されていく時代に、しっかりと足を踏み入れたとも言えるのではないか。

規格化された家については、あらかじめZEH仕様となっているため、少し手を加えれば計算結果もすぐに算出可能だ。
注文住宅では、一棟一棟のプランに合わせた計算をしていかなければならない。もちろん、変更が生じた時には、その都度計算をやり直すことになる。
建築屋としてのしっかりとした知識と能力が求められることになる。

補助金は必ずもらえるとは限らない。
予算額があるため、事業規模を上回る申請があれば、評価点の高いものから順に選ばれることになる。

評価加点としては、HEMSの設置(いわゆるエネルギーの見える化)、第三者機関認証、断熱性能のさらなる強化があるが、補助金獲得のために、これらのさらなる追加費用がお客様負担となるだろう。

そもそも各社にあるだろう標準的な仕様と、ZEH基準との差がどの程度なのか、そしてZEH基準に仕様変更することでどれだけの費用アップとなるのか。
現時点では、太陽光発電の設置は必須となるため、トータルの初期投資はもちろん増えることになる。

最終的には、ランニングコストとイニシャルコストの収支計算でZEH仕様がお得です、という言葉が出てくるはずだ。

また、補助金の申請にあたっては、申請内容の変更が認められない。
計算により性能を評価するため、間取りや使用機器、断熱性能に影響を大きく与える窓の仕様や大きさ等、多くの事柄については事前に確定しておく必要がある。
進行中の現場を見て、イメージしていたものと違うから変更して欲しいというような融通性はきかない。

ZEHは簡単に言えば、「使うエネルギー<創るエネルギー」の住宅である。
前述したように、現時点では「創エネルギー=太陽光発電」の時代であり、太陽光発電設置が義務化されるとも言える。

地球規模での環境配慮は歓迎されるべきであるが、2020年、2030年に向けて太陽光発電が載せられた建物ばかりの街並みは、どのようになるのだろうか・・・。
何か重苦しく、異様な雰囲気を想像してしまうのは私共、平澤建築事務所だけだろうかと思ったりする。

佐藤 吉行