「涼温な家」を契約されているお客様への平澤の対応の話である。
そのお客様の求める内容に、どうしても設計者として受け入れ難い部分があった。
建築屋としては、お客様の要望に対して、全力でそれに応える家づくりであるべきです。
そこに知識や技術、施工力と共に進める。
設計者の押し付けなど、あってはならないと常に思っています。
あくまでも、お客様の目的とするいい住まいをつくりあげる事にある。
しかし、一生懸命なお客様のご要望のお言葉を、そのまま鵜呑みにしてつくりあげる事は、設計者としてあってはならない無責任行為とも考えます。
真から、そのお客様、ご家族を大切に考えるのであるならば、目的である「涼温な家」のトータル満足を、お客様と共有することにある。
それは相性であり、信頼であり、また、それに応える強いエネルギーでもある。
向いている方向性は一致しているのだから、完成イメージの伝達を理解して貰う努力は、惜しんではならない。
言葉だけでは説得になってしまう。
そこで私は、完成イメージとしてつくっている住宅模型の手直しに取り掛かった。
物差し、カッターナイフ、ボンド等を使い、熱意を込めた直しを行なう。
その模型を、実際完成した本当の住宅として実感して頂けるように、カメラレンズを模型の地面から3センチに構えて写す。
それは、大人の目線での完成された風景写真です。
模型と共に、その写真を添えて渡す。
最終的判断はあくまでもお客様です。その結論を待つ。
佐藤と、伝えるべきことを全てやったと、心地良さを話した。
いい意味での自分との戦いです。
自分に嘘の無い家づくりをすべきだ。
「涼温な家」は、理論と哲学と熱意から生まれる。
模型を届けた数日後に、お客様から電話を頂いた。
「平澤さん、模型通りにつくって下さい」と。
平澤 政利